段階的拡大のスケジュール解説
現在、パート・アルバイトを含む短時間労働者に対する社会保険(厚生年金・健康保険)の適用範囲が段階的に広がっています。
最終的には、法人の事業所では規模を問わず、週20時間以上働く学生以外の人が社会保険に加入する仕組みになる予定です(個人事業所は一部を除きます)。
ただし、全国一律ですぐに適用されるわけではなく、賃金要件の撤廃(2026年10月)と企業規模要件の縮小(2027年10月〜2035年10月)が数年単位で進められていきます。
改正のポイント
- 厚生年金と健康保険はセットで加入するのが原則(ただし70歳以上の人は厚生年金の被保険者でなくなるため、75歳になるまで健康保険のみの加入になります)
- 週の所定労働時間20時間以上、学生以外、2か月を超える雇用の見込みという要件は維持
- 段階的に「賃金要件(月額8.8万円以上)」と「企業規模要件」がなくなる設計
- 企業規模は、パートなどの短時間労働者を含めない、今加入している厚生年金の被保険者(正社員など)の人数で数えます
- 中小企業にとっては段階的に準備する時間がある
改正スケジュール
| 時期 | 変更点 | 主な対象要件 | 企業規模(厚生年金の被保険者数) |
|---|---|---|---|
| 2026年9月まで | 2024年10月改正までの内容 | ①週20時間以上②月額8.8万円以上(年収約106万円)③学生以外 | 51人以上 |
| 2026年10月 | 賃金要件(月額8.8万円)を撤廃 | 週20時間以上・学生以外 | 51人以上 |
| 2027年10月 | 企業規模要件を51→36人に縮小 | 週20時間以上・学生以外 | 36人以上 |
| 2029年10月 | 企業規模要件を36→21人に縮小 | 週20時間以上・学生以外 | 21人以上 |
| 2032年10月 | 企業規模要件を21→11人に縮小 | 週20時間以上・学生以外 | 11人以上 |
| 2035年10月 | 企業規模要件を撤廃 | 週20時間以上・学生以外 | 規模を問わない |
個人事業所は、現在は「常時5人以上を使用する法定17業種」が加入義務の対象です。2029年10月からは常時5人以上を使用する全業種に広がりますが、その時点で既にある事業所は当分の間、対象外とされています。
よくある質問(Q&A)
Q1. 給与が少ないパートでも週20時間以上なら保険料を払うの?
はい。2026年10月に賃金要件が撤廃されると、月額賃金が8.8万円に届かない人でも、週20時間以上などの要件を満たせば加入対象になります。
なお、時給1,016円以上で週20時間働くと月額約8.8万円(年収換算で約106万円)に達するため、最低賃金が上がった現在は、「週の所定労働時間が20時間以上かどうか」が実際の分かれ目になります。
保険料は労使折半。本人負担は増えますが、将来の年金が上乗せされるほか、傷病手当金・出産手当金などの保障も受けられます。
Q2. うちの会社は厚生年金の加入者が20人。いつから対応が必要?
20人は「21人以上」に届かないため、2029年10月の段階では対象になりません。2032年10月(11人以上)から、週20時間以上働く短時間労働者の加入手続きが必要になります。
人数は、パートなどの短時間労働者を含めず、正社員など今加入している厚生年金の被保険者の数で数えます。人数が増えれば、より早い段階で対象になることがあります。
Q3. 健康保険だけ(または年金だけ)加入する選択肢はある?
本人や会社が選ぶことはできません。要件を満たすと、原則として健康保険と厚生年金に同時に加入します。
例外として、70歳以上の人は厚生年金の被保険者ではなくなるため、75歳(後期高齢者医療制度へ移行)になるまでは健康保険のみの加入になります。
Q4. 学生アルバイトはどうなる?
学生は引き続き適用除外です。
週20時間を超えても、昼間学生であれば加入不要です(企業側も保険料負担なし)。
ただし、夜間学生や通信制などは対象になるケースがあります。
Q5. 扶養の「130万円」の判定も変わった?
社会保険の加入とは別に、家族の健康保険の扶養に入れるかどうかの判定も見直されています。
- 2025年10月から、19歳以上23歳未満の人(配偶者を除く)は、年間収入「130万円未満」が「150万円未満」に引き上げられました
- 2026年4月から、年間収入は原則として労働契約の内容(労働条件通知書などの賃金)から見込まれる額で判定されます
まとめ
社会保険の改正は一気に全国へ広がるのではなく、賃金要件の撤廃(2026年10月)→企業規模要件の段階的縮小(2027〜2035年)という流れで進みます。
最終的には、法人の事業所では「週20時間以上働く学生以外の人は、会社の規模を問わず社会保険に加入」という仕組みに変わります(個人事業所は一部を除きます)。会社の保険料負担も増えるため、パートの方の働き方や人件費の見直しは早めの準備がおすすめです。岡山県内の事業者の方で、社会保険料を含めた人件費の試算についてお悩みの場合は、税理士法人アストラストへご相談ください。
※本記事は令和8年9月18日現在の法令・日本年金機構および厚生労働省の公表資料に基づく一般的な説明です。実際の取扱いは、個別の事実関係によって異なります。