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その工事、本当に全額「修繕費」で大丈夫?税務調査で確認される資本的支出との違い

2026.09.07

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会社が所有する建物、機械、車両などの修理や改修を行った場合、その費用を「修繕費」として支出した年度に全額経費計上することがあります。

しかし、工事業者の見積書や請求書に「修繕工事」「補修工事」と書かれていても、税務上も全額を修繕費にできるとは限りません。

工事によって資産の使用可能期間が延びたり、資産の価値が増加したりした場合には、「資本的支出」として固定資産に計上し、減価償却によって複数年度にわたり経費化する必要があります。

修繕費と資本的支出では、支出した年度の所得金額が大きく変わることがあります。そのため、建物の改装や機械の大規模修理を行った年度の税務調査では、工事内容、工事前後の状態、見積書の内訳などを確認されることがあります。重要なのは、工事の名称や金額だけではなく、何を目的として、どのような工事を行ったかです。


修繕費と資本的支出の違い

修繕費とは、固定資産の通常の維持管理や、壊れた部分を元の状態へ戻すための費用です。修繕費に該当すれば、原則として工事を行った事業年度に全額を損金へ算入します。

一方、資本的支出とは、固定資産の使用可能期間を延長させたり、価値を増加させたりするための支出です。資本的支出に該当する金額は、原則として新たな固定資産として計上し、法定耐用年数などに基づいて減価償却します。両者の基本的な違いは次のとおりです。

区分主な目的法人税上の処理
修繕費通常の維持管理、原状回復原則として支出年度に全額損金
資本的支出使用可能期間の延長、価値・性能の向上固定資産に計上して減価償却

「支出額が高いから資本的支出」「少額だから修繕費」と単純に決まるものではありません。高額な工事でも、建物や設備の原状回復のために必要な工事であれば、修繕費になる可能性があります。反対に、比較的少額でも、新しい設備を追加する工事であれば、資本的支出になる可能性があります。


請求書に「修繕工事」と書いてあれば大丈夫?

修繕費か資本的支出かは、見積書や請求書の名称だけで判断しません。国税庁も、修繕費、改良費などの名目ではなく、その実質によって判定するとしています。

例えば、請求書に「建物修繕工事一式」と書かれていても、実際の工事内容が次のようなものであれば、資本的支出になる可能性があります。

  • 建物に新たな避難階段を設置した
  • 倉庫を店舗へ用途変更するために全面改装した
  • 普通の床材から特別に耐久性の高い床材へ変更した
  • 機械へ新たな機能を追加した
  • 建物へ新しい設備を取り付けた
  • 工場の生産能力を高めるために機械を改造した
  • 従来なかった空調設備を新設した

税務調査では、請求書の「工事一式」という記載だけでは工事内容を確認できないため、詳細な見積書、工事図面、写真などを求められる可能性があります。


資本的支出になりやすい工事

国税庁は、次のような支出を資本的支出の例として挙げています。

建物へ新しい部分を付け加える工事

建物へ避難階段を新設するなど、既存資産へ物理的に新しい部分を付け加える工事です。これまで存在しなかった設備を追加するため、原則として資産価値を増加させる支出と考えられます。

用途変更のための改装

事務所を飲食店へ変更する、倉庫を店舗へ変更するなど、用途変更のために行う改造・改装に直接要した費用です。単に古くなった内装を元の状態へ戻す工事とは異なり、新しい用途に使用できるよう資産を改良しているため、資本的支出になる可能性があります。

高性能な部品への交換

機械の部品が故障した際、従来と同等の部品ではなく、特に品質や性能の高い部品へ交換した場合です。この場合、通常の部品へ交換するために必要な金額は修繕費、その金額を超えて性能向上のために支出した部分は資本的支出になる可能性があります。

ただし、技術の進歩や製造中止により、同等品が存在せず、現在一般的に使用されている部品へ交換しただけの場合もあります。新しい部品を使ったという事実だけで資本的支出と決めず、性能向上の程度や交換理由を確認する必要があります。


修繕費になりやすい工事

次のような支出は、通常の維持管理や原状回復として、修繕費に該当する可能性があります。

  • 雨漏りしている屋根の補修
  • 破損した窓ガラスの交換
  • 汚れたり剝がれたりした外壁の塗り直し
  • 故障した機械部品の同等品への交換
  • 車両の定期的な点検・整備
  • 壊れた照明器具の交換
  • 摩耗したベルトやチェーンの交換
  • 床や壁の部分的な補修
  • 定期的に実施している設備のオーバーホール
  • 災害で被害を受けた部分の原状回復

ただし、「外壁塗装は必ず修繕費」「屋根工事は必ず修繕費」と一律に判断できるわけではありません。例えば、外壁塗装と同時に断熱性能を大幅に高める工事を行った場合には、性能向上部分について資本的支出を検討する必要があります。


20万円未満なら修繕費にできる

一つの修理・改良等に要した金額が20万円未満である場合には、修繕費として損金算入できる取扱いがあります。例えば、機械の修理費が18万円であれば、原則としてその事業年度の修繕費として処理できます。

ここで注意したいのは、「一つの修理・改良等」の金額で判定することです。一つの工事代金を請求書だけ複数に分けても、別々の工事になるとは限りません。

例えば、一体として行われた60万円の工事について、請求書を20万円未満の4枚へ分割したとしても、工事の目的、契約、施工時期などから一つの工事と認められれば、60万円で判定する可能性があります。契約書や工事内容を基に、一つの修理・改良等の単位を判断する必要があります。


おおむね3年以内の周期で行う修理

一つの修理・改良等が、おおむね3年以内の周期で行われていることが過去の実績などから明らかな場合には、その支出額を修繕費として処理できる取扱いがあります。例えば、機械について2年ごとに定期的なオーバーホールを実施している場合などが考えられます。

ただし、「今後3年以内にまた修理する予定」というだけでは十分ではありません。過去の修理記録、保守契約、メーカーの整備基準などから、実際におおむね3年以内の周期で行われていることを説明できるようにします。新しく取得した機械について初めて行った修理では、過去の実績がないため、この基準を適用できるか慎重な検討が必要です。


60万円未満なら必ず修繕費になる?

実務では、「工事代金が60万円未満なら修繕費にできる」と説明されることがあります。しかし、この理解は正確ではありません。

60万円未満という形式基準は、その支出が資本的支出か修繕費か明らかでない場合に使用するものです。工事内容から明らかに新しい資産を取得した場合や、資産の価値を増加させることが明確な場合には、60万円未満であっても資本的支出になる可能性があります。

例えば、既存の建物に新しい設備を50万円で設置した場合です。新しい設備を物理的に付け加えたことが明らかであれば、「60万円未満だから修繕費」とは限りません。まず、工事内容から修繕費か資本的支出かを実質的に判断し、それでも区分が明らかでない場合に形式基準を検討します。


形式基準による判定

一つの修理・改良等について、資本的支出か修繕費かが明らかでない場合には、次のいずれかに該当すれば、修繕費として処理できる取扱いがあります。

  • 支出額が60万円未満である
  • 支出額が対象となる固定資産の前期末取得価額のおおむね10%以下である

例えば、前期末における建物の取得価額が3,000万円で、区分が明らかでない改修工事が250万円だったとします。250万円は60万円以上ですが、建物の取得価額3,000万円の10%である300万円以下です。

3,000万円 × 10% = 300万円

工事内容から資本的支出か修繕費か明らかでないことなど、適用条件を満たしていれば、形式基準により修繕費として処理できる可能性があります。

ここで使用するのは、固定資産の現在の帳簿価額ではなく、原則として前期末における取得価額です。減価償却後の帳簿価額と混同しないよう注意してください。


30%基準の特例(資本的支出と修繕費の区分の特例)

資本的支出と修繕費の区分が明らかでない場合には、会社が継続して一定の経理を行うことを条件に、支出額の一部を修繕費、残額を資本的支出とする取扱いもあります。修繕費とする金額は、次のいずれか少ない金額です。

  • 支出額の30%
  • 対象となる固定資産の前期末取得価額の10%

例えば、前期末取得価額が2,000万円の建物について、区分が明らかでない改修工事に800万円を支出したとします。支出額の30%は240万円です。

800万円 × 30% = 240万円

前期末取得価額の10%は200万円です。

2,000万円 × 10% = 200万円

いずれか少ない金額は200万円なので、一定の要件を満たして継続適用する場合には、200万円を修繕費、残り600万円を資本的支出とする処理を検討できます。少ない方の金額が修繕費になるため、支出額の30%である240万円を修繕費にできるわけではない点に注意してください。

項目金額
支出額800万円
支出額の30%240万円
前期末取得価額の10%200万円
修繕費(いずれか少ない金額)200万円
資本的支出(残額)600万円

ただし、この特例は、工事内容から資本的支出と修繕費の区分が明らかでない場合の簡便的な取扱いです。明らかに新しい設備を取得した場合などに、支出額の一部だけを修繕費とするための制度ではありません。また、先に説明した20万円未満・おおむね3年以内の周期による判定や、60万円未満・前期末取得価額の10%以下という形式基準の適用を受けるものは、この特例の対象から除かれます。


工事を一式で契約すると判定が難しくなる

建物の改修工事では、修繕費となる部分と資本的支出となる部分が同じ契約に含まれることがあります。例えば、次の工事を同時に行うケースです。

  • 雨漏り部分の補修
  • 古くなった外壁の塗装
  • 新しい看板の設置
  • 従来なかった断熱設備の追加
  • 事務所を店舗へ変更する内装工事

雨漏り補修や通常の外壁塗装は修繕費となる可能性がありますが、新しい看板や断熱設備の設置、用途変更のための工事は資本的支出となる可能性があります。見積書が「建物改修工事一式1,500万円」となっていると、それぞれの工事費を区分できません。

税務調査で工事内容の説明ができるよう、工事を依頼する段階で次の項目を分けた見積書を作成してもらうことが重要です。

  • 解体・撤去費
  • 原状回復工事
  • 内装工事
  • 外壁工事
  • 設備の新設
  • 既存設備の交換
  • 設計料
  • 共通仮設費
  • 諸経費

工事完了後に税務上の理由だけで金額を区分しても、合理的な根拠がなければ説明が難しくなります。


具体例――店舗の改装費1,200万円

岡山県内で飲食店を経営する会社が、既存店舗の改装工事に1,200万円を支払ったケースを考えます。工事内容は次のとおりです。

工事内容金額
雨漏りしている屋根の補修2,500,000円
汚れた外壁の塗り直し1,500,000円
破損した床の張り替え1,000,000円
客席を増やすための増築4,000,000円
新しい厨房設備の設置3,000,000円
合計12,000,000円

屋根の補修、外壁の塗り直し、破損した床の張り替えは、元の機能を回復するための工事であれば、修繕費に該当する可能性があります。一方、客席を増やすための増築は、建物へ新しい部分を付け加える工事であり、資本的支出となる可能性が高いでしょう。新しい厨房設備についても、既存設備の単なる修理ではなく、新しい減価償却資産を取得したものとして、固定資産へ計上することを検討します。

このケースでは、1,200万円全額を修繕費にするのではなく、工事内容ごとに次のような区分を検討します。

税務上の区分金額の例
修繕費となる可能性がある部分5,000,000円
建物の資本的支出となる可能性がある部分4,000,000円
厨房設備として固定資産計上する部分3,000,000円

実際の判定は、工事前の状態、使用材料、性能向上の有無、建物との一体性などによって異なります。


材料が新しくなっただけで資本的支出になる?

古い建物を修理する場合、工事当時とまったく同じ材料が販売されていないことがあります。例えば、古い木製建具を現在一般的なアルミ製建具へ交換したり、製造中止になった機械部品を現行品へ交換したりするケースです。

新しい材料や部品の方が以前より性能が高いというだけで、直ちに全額が資本的支出になるとは限りません。技術の進歩により、同等品として現在通常使用されている材料へ交換しただけで、工事の目的が原状回復である場合には、修繕費となる可能性があります。

一方、会社が積極的に上位グレードを選び、生産能力、耐久性、省エネ性能などを大幅に向上させた場合には、その性能向上部分について資本的支出を検討します。次の事項を資料へ残しておくと、工事の目的を説明しやすくなります。

  • 旧部品が製造中止になっていたこと
  • 同等品として選択できる部品の一覧
  • メーカーや工事業者の説明
  • 新旧部品の性能比較
  • 上位グレードを選んだ理由
  • 通常の交換費用と追加費用の内訳

耐用年数を過ぎた建物でも同じ判定が必要

「建物はすでに耐用年数を過ぎているため、その後の工事はすべて修繕費にできる」という考え方は適切ではありません。

法定耐用年数を経過した減価償却資産について修理・改良等を行った場合も、通常の資産と同じように修繕費と資本的支出を区分します。

古い建物に大規模な改装を行い、用途を変更したり、新しい機能を付加したりした場合には、資本的支出となる可能性があります。

資産の築年数だけで判断せず、工事内容を確認する必要があります。なお、耐用年数を経過した資産へ資本的支出を行った場合の減価償却の方法は、原則としてその資産の種類・耐用年数に応じて計算します。


ソフトウェアの改修にも注意

修繕費と資本的支出の問題は、建物や機械だけではありません。業務システムやソフトウェアの改修費についても、改修内容によって処理が異なります。例えば、次のような改修は、修繕費に該当する可能性があります。

  • プログラムの不具合を修正した
  • 法令改正に対応するため既存機能を修正した
  • 障害を除去して元の機能を回復した
  • OS更新に伴い既存機能を維持するため調整した

一方、次のような改修は、資本的支出になる可能性があります。

  • 新しい業務機能を追加した
  • 処理能力を大幅に向上させた
  • 新しい事業へ対応するためシステムを拡張した
  • 従来存在しなかった分析機能を追加した

システム会社の請求書に「保守費用」「改修費用」と書かれているだけでは、税務上の区分を判断できません。仕様書、改修前後の機能一覧、作業報告書などを保存しておく必要があります。


賃借物件の内装工事も全額修繕費とは限らない

会社が借りている事務所や店舗について工事を行った場合、「自社所有の建物ではないから全額経費にできる」と考えることがあります。

しかし、賃借物件に対する支出であっても、その工事による効果が将来に及ぶ場合には、資本的支出や賃借物件に対する造作などとして固定資産計上が必要になる可能性があります。例えば、次のような工事です。

  • 店舗の内装を全面的に作り替えた
  • 新しい間仕切りを設置した
  • 給排水設備を新設した
  • 厨房設備を設置した
  • 電気設備を増設した
  • 賃貸人に請求できない造作工事を行った

一方、借りている事務所の破損箇所を契約に基づいて原状回復した場合などは、修繕費になる可能性があります。賃貸借契約書で修繕義務や費用負担者を確認し、工事内容と退去時の取扱いを整理する必要があります。


税務調査で確認される資料

修繕費が多額に計上されている年度では、税務調査で次のような資料を確認されることがあります。

  • 工事請負契約書
  • 見積書
  • 請求書
  • 工事明細書
  • 工事図面
  • 仕様書
  • 工程表
  • 工事前後の写真
  • 完成報告書
  • 補助金の申請資料
  • 保険金の請求資料
  • 固定資産台帳
  • 修繕履歴
  • 稟議書・取締役会議事録
  • 工事業者とのメール
  • 建築確認や用途変更に関する書類
  • 旧設備と新設備の性能比較資料

特に重要なのは、工事前の状態と工事後の状態を比較できる資料です。工事完了後に税務調査が行われても、すでに補修前の状態は確認できません。工事前の破損状況、雨漏り、故障箇所などを写真で残し、「原状回復のために必要だった工事」であることを説明できるようにしておきましょう。


税務調査で聞かれやすい質問

調査では、経理担当者だけでなく、工事を発注した役員や現場責任者へ次のような質問が行われることがあります。

  • 工事を行う前にどのような不具合があったか
  • 工事の目的は修理か、店舗改装や設備増強か
  • 工事前後で用途が変わったか
  • 面積、容量、性能は増加したか
  • 従来と同じ材料を使用したか
  • 工事後、使用可能期間はどの程度伸びたか
  • 同様の工事を過去にも行っているか
  • 請求書を複数に分けた理由は何か
  • 修繕費と資本的支出をどのように区分したか
  • 保険金や補助金を受け取っていないか

経理担当者が「施工業者から修理代と聞いた」と回答するだけでは、工事の実質を説明できません。

工事内容を理解している現場担当者と経理担当者の情報を、決算前に共有しておく必要があります。


修繕費として処理する場合の社内メモ

多額の工事を修繕費として処理する場合には、申告時に簡単な判定資料を作成しておくことをおすすめします。例えば、次の事項を記載します。

  • 対象となる固定資産
  • 工事の目的
  • 工事前の故障・劣化状況
  • 実施した工事内容
  • 新しい機能を追加していないこと
  • 使用可能期間や価値の増加が主目的ではないこと
  • 過去の修繕時期
  • 適用した判定基準
  • 資本的支出部分を区分した場合の計算
  • 判断に使用した資料

税務調査が数年後に行われると、工事を担当した従業員が退職していたり、経営者自身も詳細を覚えていなかったりすることがあります。支出した年度に判断根拠を残しておくことが重要です。

あわせて、決算を確定する前に、一定額以上の修繕費を一覧にして個別に確認しておくと安心です。前年と比較して修繕費が大きく増えている事業年度は、その原因も説明できるようにしておきましょう。


資本的支出と判断された場合の影響

税務調査で修繕費の一部または全部が資本的支出と判断されると、支出年度に計上した修繕費を減額し、固定資産へ振り替えることになります。そのうえで、支出年度に損金算入できる減価償却費を計算します。

例えば、修繕費として1,000万円を全額損金にしていたものの、税務調査で資本的支出と判断され、支出年度の減価償却費が100万円だったとします。単純化すると、当期の所得金額へ加算される金額は次のようになります。

修繕費1,000万円 - 減価償却費100万円 = 900万円

この900万円について、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などの追加負担が生じる可能性があります。状況によっては、過少申告加算税や延滞税も発生します。

翌期以降は減価償却費として損金算入できますが、支出年度に全額経費化できなくなるため、追加納税額が大きくなることがあります。

このとき、調査対象となった年度だけを修正し、その後の事業年度で減価償却費を計上しないままにすると、期間を通じて必要以上に所得が増えてしまう可能性があります。修正後の固定資産台帳と、翌期以降の減価償却計算もあわせて整理する必要があります。

なお、修繕費か資本的支出かの判断を誤ったという理由だけで、当然に重加算税が課されるわけではありません。ただし、工事内容を意図的に隠した、請求書を不自然に分割・改変したといった事情がある場合には、より慎重な検討が必要になります。判定に迷う工事こそ、金額を分けた見積書と工事前の記録を残し、判断の根拠を説明できるようにしておくことが大切です。


工事を依頼する前に税務上の区分を検討する

修繕費と資本的支出の判定は、決算時に請求書を見て初めて考えるのではなく、工事を計画する段階から検討するのが理想です。工事前に次の点を整理しておきましょう。

  • 工事の目的は原状回復か、機能向上か
  • 新しい設備や機能を追加するか
  • 修繕部分と改良部分を分けられるか
  • 見積書の項目が「一式」になっていないか
  • 工事前の写真を保存しているか
  • 旧部品と新部品の性能差はどの程度か
  • 定期修繕の過去実績があるか
  • 補助金や保険金を受け取る予定があるか
  • 賃借物件の場合、契約上の費用負担者は誰か
  • 固定資産へ計上した場合の耐用年数は何年か

修繕費か資本的支出かによって、当期の税額だけでなく、利益計画、融資審査、補助金の経理処理などにも影響することがあります。


まとめ

工事業者の見積書や請求書に「修繕工事」と書かれていても、税務上も全額を修繕費にできるとは限りません。通常の維持管理や原状回復のための支出は修繕費となる一方、資産の使用可能期間を延長させたり、価値や性能を高めたりする支出は資本的支出となります。

20万円未満、おおむね3年以内の周期、60万円未満、前期末取得価額の10%以下などの基準がありますが、それぞれ適用条件が異なります。特に60万円未満や10%以下という形式基準は、資本的支出か修繕費か明らかでない場合に使用するものであり、明らかに新しい設備を取得した場合などに一律で適用できるものではありません。

税理士法人アストラストでは、建物改修、機械修理、賃借店舗の内装工事、ソフトウェア改修などについて、見積書や工事写真を確認し、修繕費と資本的支出の区分、減価償却、消費税への影響まで含めて検討しています。

岡山県内で大規模な改修工事を予定している会社や、多額の工事代金を修繕費として処理している事業者の方は、工事完了後ではなく、見積書を受け取った段階でご相談ください。

※本記事は令和8年7月25日現在の法令、通達および国税庁公表資料に基づく一般的な説明です。実際の判定は、工事目的、工事前後の状態、性能向上の程度、見積内容、過去の修繕実績、対象資産の取得価額、会社の継続的な経理方法などによって異なります。実際の判断にあたっては、顧問税理士等にご確認ください。

参考資料

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