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決算前後の売上を翌期に回していませんか?税務調査で確認される売上計上時期

2026.10.05

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商品を3月中に出荷したものの、請求書を発行したのは4月だった。工事は決算日までに終わっていたものの、代金が入金されたのは翌月だった。このような取引について、請求日や入金日を基準に翌期の売上げとしている会社があります。

しかし、売上げを計上する時期は、請求書の発行日や代金の入金日だけで決まるものではありません。

商品の販売では、原則として商品を引き渡した日が基準となります。請負やサービスでは、目的物を完成して引き渡した日や、約束した役務の提供を完了した日が重要です。

税務調査では、売上台帳だけでなく、決算日前後の納品書、出荷記録、検収書、作業報告書、請求書、入金記録などを照合し、売上げが正しい事業年度に計上されているか確認されることがあります。

請求書を翌月に発行したからといって、売上げも翌期になるとは限りません。反対に、前受金を受け取っただけで、商品を引き渡していない場合には、直ちに売上げになるとは限りません。


商品販売は原則として「引渡しの日」に売上計上する

法人税では、棚卸資産の販売による収益は、原則として商品を引き渡した日の属する事業年度に計上します。

ただし、「引渡しの日」として考えられる日は一つではありません。国税庁の法人税基本通達や消費税法基本通達では、取引の性質や契約内容に応じ、例えば次の日が示されています。

  • 商品を出荷した日
  • 商品を船積みした日
  • 商品が取引先へ到着した日
  • 取引先が検収した日
  • 取引先が商品を使用できるようになった日
  • 検針などによって販売数量を確認した日

このうち、取引内容に照らして合理的な日を選び、継続して売上計上することが重要です。

例えば、通常は出荷日に売上げを計上している会社が、決算直前の取引だけ検収日基準へ変更し、翌期の売上げにすることは適切とはいえない可能性があります。

一方、契約上、取引先の検収が完了するまで代金を請求できず、不合格の場合には商品を引き取らなければならないなど、検収が重要な条件となっている取引では、検収日を基準とすることに合理性がある場合もあります。

出荷日と検収日のどちらを使用するかは、契約内容、商品の性質、代金確定の条件、過去からの会計処理などを総合して判断します。


請求書の発行日や入金日だけでは決まらない

中小企業では、毎月20日締めや月末締めで請求書を作成し、翌月に売上げを入力することがあります。

日常的な月次処理として請求書を基に記帳すること自体は珍しくありません。しかし、決算では、決算日までに引渡しや役務提供が完了している取引を確認し、未請求であっても売上げを計上する必要があります。

例えば、3月決算法人が3月28日に商品を引き渡し、4月10日に請求書を発行した場合です。会社が合理的な引渡基準を継続して採用しており、3月28日に引渡しが完了したのであれば、原則として3月期の売上げとして計上します。

会計上は、請求書が未発行でも、売掛金や未収入金などを相手科目として処理します。

また、代金が5月に入金されたとしても、通常は入金日まで売上計上を待つことはできません。入金日は売掛金を回収した日であり、売上げが成立した日とは異なるためです。

ただし、契約が解除される可能性が高い、対価が確定していない、商品の引渡しが終わっていないなどの事情がある場合は、個別の検討が必要です。


工事・修理・サービスは「完成」「引渡し」「役務完了」を確認する

工事、修理、システム開発、コンサルティングなどの請負取引では、物の引渡しが必要かどうかによって基本的な考え方が異なります。

物の引渡しを必要とする請負では、原則として、目的物の全部を完成して相手方へ引き渡した日が基準になります。物の引渡しを必要としない請負では、原則として、契約で約束した役務の全部を提供し終えた日が基準です。

例えば、機械修理が3月25日に完了し、取引先が3月27日から機械を使用している場合、請求書を4月に発行していても、3月期の売上げとなる可能性があります。

一方、契約上、取引先による試運転や検収が完了しなければ引渡しにならず、決算日時点で重要な手直しが残っている場合には、翌期の売上げになることもあります。

建設工事では、次の日付を区別して確認する必要があります。

  • 工事を開始した日
  • 現場での作業が終わった日
  • 完成通知を提出した日
  • 取引先が検査した日
  • 手直し工事が完了した日
  • 完成物を引き渡した日
  • 請求書を発行した日
  • 工事代金を受け取った日

どの日を売上計上の基準とするかは、工事の内容、契約条件、検収の実態、会社が継続して採用している基準などによって異なります。

また、長期間にわたる工事や継続的なサービスでは、履行義務の充足状況に応じて期間の経過に合わせて収益を計上する場合もあります。「すべて完成するまで売上げにしない」と一律に判断することはできません。


年間契約のサービスを前払いで受け取った場合

保守契約、顧問契約、サブスクリプションなどでは、1年分の料金を先に受け取ることがあります。代金を受け取った時点で、まだ将来のサービスを提供していない場合、その全額が直ちに売上げになるとは限りません。

例えば、4月から翌年3月までの保守料金120万円を4月に一括して受け取り、毎月の保守サービスが月ごとに完了する契約であれば、会計・税務上も毎月10万円ずつ収益を認識する処理が考えられます。

受取時には前受金として処理し、サービスの提供が完了するごとに売上げへ振り替えます。

反対に、サービスをすでに完了しているにもかかわらず、入金されていないという理由で前受金や仮受金のまま残すことは適切ではありません。契約期間、料金の計算方法、途中解約時の返金条件、サービスを提供する単位などを確認する必要があります。


税務調査では決算日前後の資料を照合する

売上計上時期の確認では、総勘定元帳の売上高だけを見るとは限りません。一般的には、次のような資料が確認されることがあります。

  • 売上台帳、売掛金元帳
  • 総勘定元帳
  • 見積書、注文書、注文請書
  • 売買契約書、工事請負契約書、業務委託契約書
  • 出荷指示書、出荷記録
  • 宅配便や運送会社の配送記録
  • 納品書、物品受領書
  • 検収書、検査合格書
  • 作業日報、工事台帳
  • 完成報告書、引渡確認書
  • サービス提供報告書
  • 請求書控え、請求書番号の一覧
  • 預金通帳、入金明細
  • 決済代行会社やECサイトの売上明細
  • 決算後に発行した請求書
  • 決算後に入金された売掛金の一覧
  • 返品、値引き、取消しに関する資料
  • 取引先とのメールや業務用チャット
  • 前受金、仮受金、未収入金の内訳

税務調査では、決算日の直前と直後に行われた取引を抽出し、商品やサービスの流れをたどることがあります。例えば、4月に入金された金額について請求書を確認し、その請求の対象となった商品がいつ出荷されたか、工事がいつ完成したかを遡って確認する方法です。


実際に聞かれやすい質問

「会社の売上計上基準は何ですか」

商品販売では出荷日、納品日、検収日のどれを基準としているのか、工事やサービスでは完成日、引渡日、検収日のどれを使用しているのか確認されることがあります。

経理担当者が「請求書を発行した日に売上げを入力しています」と答えても、契約内容や実際の引渡時期と一致していなければ、決算時の追加計上が必要です。会社が採用する基準を文書化し、営業担当者や現場責任者とも共有しておくことが大切です。

「決算後に発行した請求書は、何月の取引ですか」

4月に発行した請求書であっても、3月中に商品の引渡しや役務提供が完了している場合があります。請求書の発行月だけでなく、納品書、検収書、作業報告書などから実際の取引時期を確認します。

「決算後すぐに入金された金額は何の代金ですか」

決算直後の入金は、決算日前に完了した取引の代金である可能性があります。入金日から請求書、納品書、契約書へ遡り、売上計上年度が正しいか確認されることがあります。

ただし、決算日前に受け取った金額でも、将来の商品引渡しやサービス提供に対する前受金であれば、直ちに売上げになるとは限りません。

「検収が遅れた理由は何ですか」

決算直前に出荷した商品について、検収が翌期になっている場合、その理由が確認されることがあります。契約上必要な性能試験を行っていた、重要な不具合が残っていたなどの合理的な事情があれば、検収時期を説明できる可能性があります。

一方、実際には取引先がすでに使用しているのに、形式的な検収書の日付だけが翌期になっている場合は、売上計上を翌期まで遅らせる理由として認められない可能性があります。

「返品や値引きは実際に発生していますか」

決算後の返品や値引きを理由に、決算期の売上げを減額している場合、その原因、発生日、金額、取引先との合意が確認されることがあります。返品伝票、値引合意書、クレジットノート、返金記録などを保存し、実際の取引に基づく処理であることを説明できるようにしましょう。


具体例で確認

岡山県内の3月決算法人が、取引先から機械設備の修理を請け負ったケースを考えます。取引内容は次のとおりです。

項目内容
修理代金税込1,100万円
税抜金額1,000万円
消費税・地方消費税相当額100万円
修理完了日3月28日
取引先の確認日3月31日
請求書発行日4月10日
入金日5月31日

契約では、修理完了後に取引先が動作確認を行い、確認書へ署名した時点で作業完了とすることになっていました。取引先は3月31日に確認書へ署名し、その日から機械を使用しています。

この場合、請求書の発行日が4月10日、入金日が5月31日であっても、原則として3月31日までに引渡しまたは役務提供が完了したものとして、3月期の売上げに計上することが考えられます。

会社が請求書発行日を基準に翌期の売上げとしていた場合、税務調査で3月期の売上計上漏れを指摘される可能性があります。

関連する原価がすでに3月期の費用へ計上されていたと仮定すると、税抜経理方式の場合、法人税の所得は税抜売上高1,000万円分増加する可能性があります。

また、会社が消費税の課税事業者で、この取引が標準税率10%の課税取引である場合、単純計算では売上げに係る消費税・地方消費税相当額100万円も3月期の課税売上げとして処理する必要があります。

1,100万円 × 10 / 110 = 100万円

実際の法人税額や消費税の納付額は、対応する原価、欠損金、税額控除、課税方式、売上対価の返還などによって異なります。関連する原価も誤って翌期に計上されている場合には、売上げだけを修正するのではなく、原価の帰属時期も確認します。


指摘された場合の税務上の影響

法人税と地方税

売上計上漏れがあると、その事業年度の所得が増加し、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などの追加納付につながる可能性があります。

ただし、売上げに直接対応する仕入れ、外注費、材料費などの計上時期も誤っていた場合には、その原価をどの事業年度へ帰属させるかも確認します。売上高だけがそのまま課税所得の増加額になるとは限りません。

消費税

課税事業者が行った課税取引であれば、売上計上時期の誤りが消費税の課税期間にも影響する可能性があります。

商品の販売は原則として引渡しの日、請負による役務提供は原則として目的物を引き渡した日または役務提供を完了した日が基準です。簡易課税、2割特例・3割特例などを適用している場合も、どの課税期間の課税売上げになるかという問題は残ります。なお、令和8年度税制改正で創設された3割特例は、一定の個人事業者の令和9年分・令和10年分の申告だけが対象で、法人は利用できません。2割特例は、令和8年9月30日を含む課税期間までで終わります(3月決算法人であれば、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの課税期間まで)。そのため、法人がこれより後の課税期間に申告するときは、原則課税か簡易課税によることになります。

翌事業年度の訂正

本来は前期に計上すべき売上げを翌期にも計上している場合、前期の所得を増額するだけでなく、翌期の売上げから重複分を除く必要があります。年度ごとの修正を整理しなければ、同じ売上げへ二重に課税されるおそれがあります。

加算税と延滞税

修正申告や更正によって追加の税額が発生する場合には、過少申告加算税や延滞税が生じることがあります。

もっとも、売上計上基準に判断の余地があった、資料の見方を誤ったというだけで、当然に重加算税が課されるわけではありません。売上げを意図的に帳簿から除外した、請求書や納品書の日付を改変した、取引資料を隠したといった事情がある場合には、より重い取扱いが問題になる可能性があります。

誤りに気付いた場合は、税務調査を待たず、修正申告の要否を早めに確認することが重要です。


税務調査前・決算前にできる対応

売上計上基準を取引別に決める

商品販売、工事、修理、運送、月額サービスなど、取引の種類ごとに売上計上基準を整理します。例えば、次のような社内基準を作成します。

  • 商品販売は出荷日または検収日
  • 修理業務は修理完了・引渡日
  • 工事は契約に基づく完成引渡日
  • 月額サービスは毎月のサービス提供完了日
  • 年間料金の前払いは契約内容に応じて期間配分

採用する日が契約内容に照らして合理的か、毎期継続して適用されているかを確認します。

決算日前後1か月程度の取引を一覧にする

決算日の前後に出荷、納品、検収、完成、請求、入金が行われた取引を一覧にします。特に、金額の大きな取引や、出荷日と検収日が異なる取引は個別に確認しましょう。

決算後の請求書と入金から遡る

翌期の最初の1か月から2か月に発行した請求書や入金された代金を確認し、前期末までに引渡しや役務提供が完了していなかったか調べます。売掛金の回収一覧と請求書、納品書を対応させることで、未計上売上げを発見できることがあります。

未請求売上げを決算整理で計上する

決算日までに引渡しや役務提供が完了しているものの、請求書をまだ発行していない取引は、未請求売上げとして決算整理を行います。翌期に請求書を発行した際、同じ売上げを再び計上しないよう、翌期首の処理方法も決めておきます。

前受金と売上げを区分する

入金済みだから売上げ、未入金だから売上げではない、という判断は適切ではありません。将来の引渡しやサービスに対する前受金と、すでに完了した取引の売掛金を区分します。

契約書と現場資料を一致させる

契約書では検収完了を引渡条件としているのに、検収書を作成していない会社もあります。契約書、納品書、検収書、作業報告書、請求書の内容と日付が、実際の取引状況と一致するように整備しましょう。

後から日付を合わせて書類を作るのではなく、取引の都度記録することが重要です。


まとめ

売上げの計上時期は、請求書の発行日や代金の入金日だけでは決まりません。

商品販売では、原則として商品を引き渡した日が基準となります。出荷日、到着日、検収日などのうち、取引の性質や契約内容に照らして合理的な日を選び、継続して適用する必要があります。

工事、修理、サービスでは、目的物の完成・引渡しや役務提供の完了時期を確認します。長期工事や継続的なサービスなどでは、期間の経過に応じた収益計上が必要となる場合もあります。

税務調査では、決算後の請求書や入金から取引を遡り、納品書、出荷記録、検収書、作業報告書などと照合されることがあります。

税理士法人アストラストでは、売上計上基準の確認、決算日前後の取引チェック、未請求売上げ・前受金の整理、工事やサービスの収益認識、法人税・消費税への影響試算まで対応しています。

岡山県内で、請求書を基準に売上げを入力している会社、工事や修理の検収が翌月になることが多い会社、決算後に多額の請求・入金がある会社は、決算書を確定する前にご相談ください。

※本記事は令和8年9月19日現在の法令、通達および国税庁公表資料に基づく一般的な説明です。実際の売上計上時期は、取引の種類、契約条件、検収の実態、履行義務、会社が継続して採用している会計処理などによって異なります。実際の判断にあたっては、顧問税理士等にご確認ください。

参考資料

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