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建設業の決算前チェック|未成工事支出金の確認ポイント

税理士法人アストラスト 税理士 三宅 晴久

建設業では、材料を仕入れた日、下請業者へ支払った日、元請業者へ請求した日、工事を完成して引き渡した日が、それぞれ別の日になります。そのため決算では、売上の計上時期だけでなく、工事原価をどの期の費用にするかの確認が必要になります。

このページは、決算の打合せの前に、社内で確認していただきたい点をまとめたものです。上半分が考え方、下半分がチェックリストです。


税務調査では、売上だけでなく原価も確認されます

税務調査では、決算期をまたぐ取引について、本来当期に計上すべき売上が翌期に繰り延べられていないかが確認されます。3月決算であれば、3月中に完成した工事の売上が4月に計上されていないか、といった点です。

この売上の計上時期については、決算のときに確認されている会社が多いところです。一方で、売上の計上時期は適切でも、原価の処理に問題が残っているケースが見受けられます。その代表が「未成工事支出金」の計上漏れです。


未成工事支出金とは

決算日の時点で完成していない工事について、それまでに発生した工事原価を、費用ではなく資産として計上しておくものです。

建設業では、一つの工事が数週間から数か月、場合によっては数年にわたることがあります。工事の完成時に売上を計上する方法をとっている場合、決算日時点で未完成の工事に対応する材料費・労務費・外注費などは、原則として当期の完成工事原価とせず、未成工事支出金として翌期へ繰り越すことになります。

ただし、未完成工事の原価を一律に繰り越すわけではありません。工事収益をどの時点で認識しているか、工事がどこまで進んでいるかによって、処理は変わります。


3月決算の会社の例

次のような工事があったとします。

項目内容
工事開始日3月20日
工事完成日4月10日
売上計上日4月10日
3月中に発生した材料費100万円
3月中に発生した労務費80万円
3月中に発生した外注費120万円

工事の完成時に売上を計上する方法をとっていて、3月末の時点では工事収益を認識していないとします。

ここで、3月中に発生した合計300万円が、そのまま当期の経費として処理されていたらどうなるでしょうか。売上は翌期なのに、原価だけが当期に計上されることになります。

この場合は、原則として300万円を未成工事支出金として資産に計上し、翌期へ繰り越すことになります。決算の振替は、例えば次のようになります。

未成工事支出金 300万円/完成工事原価 300万円

翌期に工事が完成して引き渡したときに、完成工事原価へ戻します。

完成工事原価 300万円/未成工事支出金 300万円

この振替を忘れていた場合、当期の利益が300万円少なく計算されます。税務調査で指摘されれば、所得金額が300万円増え、追加の法人税等が生じる可能性があります。


特に漏れやすいのは、従業員の人件費です

材料費や外注費は、請求書に工事名や現場名が書かれていることが多く、工事ごとに把握しやすい費目です。

一方、従業員の給与は、毎月まとめて給与手当や賃金として処理している会社が少なくありません。決算のときに工事ごとの労務費を集計していないと、未成工事支出金への振替が漏れます。

例えば、3月21日から3月31日まで、従業員が翌期完成予定の工事に従事していたとします。その期間の給与をすべて当期の経費として処理していると、売上は翌期、原価は当期という状態になります。

給与を支払った時期と、その給与が対応する工事の収益を認識する時期は、必ずしも一致しません。

そのため決算では、賃金台帳だけでなく、作業日報や出面表などから工事別の労務費を把握しておくことが必要になります。

なお、未成工事支出金の対象になるのは、工事原価に当たる労務費です。事務職員の給与や事務所家賃など、一般管理費に当たるものまで一律に振り替えるわけではありません。


税務署が照合する資料

税務調査では、請求書や売上台帳だけでなく、現場の記録まで照合されることがあります。

  • 賃金台帳・給与明細 従業員に支払った給与や賃金の金額
  • 作業日報・出面表 従業員がいつ、どの現場で作業していたか
  • 工事台帳 工事ごとの売上、材料費、外注費、労務費の計上状況
  • 請求書・工事完成関係資料 工事の完成時期と売上計上時期

例えば、3月25日に従業員が現場で作業していた場合、その作業がどの工事に対応するものかを確認します。その工事が3月末時点で未完成で、売上も翌期に計上されているなら、その労務費が未成工事支出金に含まれているかが問題になります。


計上漏れは、翌期にも影響します

本来300万円を翌期へ繰り越すべきところ、当期の経費として処理していた場合、当期は経費が過大になり、翌期は本来計上すべき原価が不足します。

このように工事原価の計上時期の誤りは、複数の事業年度に影響します。税務調査でも、調査の対象年度だけでなく、その前後の事業年度との関係が確認されます。


決算前チェックリスト

決算の打合せの前に、次の項目をご確認ください。チェックは、このページを開いた端末に記録されます(当事務所には送信されません)。

あわせてお送りいただきたい資料

  • 工事台帳(工事原価台帳)
  • 決算日時点の未完成工事の一覧
  • 作業日報・出面表(決算月の分)
  • 決算月の後半と、決算日後に届いた請求書
  • 賃金台帳(決算月の分)

工事台帳や作業日報を日頃から整えておくと、決算のときに未成工事支出金を集計しやすくなります。初めてで形式が分からない場合は、当事務所で様式をご用意します。


まとめ

建設業の決算では、売上の計上漏れを防ぐことはもちろん大切です。ただ、それだけでは足りません。

決算日時点で進行中の工事を把握し、それぞれの工事について、材料費・外注費・労務費などが適切に処理されているかを確認する必要があります。特に決算月の後半に発生した工事原価には、翌期に完成する工事に対応するものが含まれていないか、注意が必要です。

確認の視点は、ひとつだけです。

売上は翌期なのに、原価だけ当期に計上されていないか

判断に迷うときは、決算を締める前にご連絡ください。工事の進み具合と収益の認識方法を確認したうえで、処理をご相談します。

※本ページは令和8年10月18日現在の法令・通達および国税庁公表資料に基づく一般的な説明です。実際の取扱いは、工事収益の認識方法、工事の進捗、原価の集計方法などによって異なります。個別の判断は、決算前にご相談ください。

参考資料

判断に迷うときは、決算を締める前にご連絡ください

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