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「年収の壁」ってなに?働き方に影響するラインを解説

2025.10.13

パートやアルバイトで働く方、そうした方を雇っている事業者の方からよく相談を受けるのが「年収の壁」という言葉です。

一定の年収を超えると税金や社会保険料の負担が生じ、手取りが思ったほど増えないことから「壁」と呼ばれています。

ただ、この「壁」の金額は、令和7年度・令和8年度の税制改正と、2025年の年金制度改正によって大きく変わりました。「103万円」「106万円」といった数字のまま覚えていると、働き方を必要以上に抑えてしまうおそれがあります。この記事では、令和8年(2026年)分の所得税と、2026年9月時点の社会保険のルールに沿って整理します。


税金の壁(令和8年分の所得税)

税金の壁は、1月〜12月の給与の額面(非課税の通勤手当などを除く)で判定します。以下は、収入が給与だけの場合の金額です。

本人の所得税:178万円まではかかりません

以前は「103万円の壁」と呼ばれていましたが、令和7年分から所得税がかからない給与収入は160万円に上がり、令和8年分・令和9年分は178万円になりました。

  • 基礎控除:104万円(合計所得金額489万円以下の場合)
  • 給与所得控除の最低額:74万円
  • 104万円+74万円=178万円

このため、所得税の「103万円の壁」は、いまはもうありません。

住民税:所得税より低い年収からかかります

住民税の基礎控除は43万円のままで、所得税のような引上げは行われていません(地方税法第314条の2)。そのため、所得税はかからなくても住民税はかかる、ということがあります。住民税がかからない年収の線は、お住まいの市町村や扶養家族の有無によって異なります。

配偶者の税金:136万円・169万円・207万円

パートで働く方の年収によって、配偶者(夫や妻)が受けられる控除は次のように変わります(控除を受ける配偶者自身の合計所得金額が900万円以下の場合。900万円を超えると控除額が小さくなり、1,000万円を超えると受けられません)。

パートで働く方の給与収入(令和8年分) 配偶者が受けられる控除
136万円以下 配偶者控除 38万円
136万円超〜169万円以下 配偶者特別控除 38万円(配偶者控除と同じ額)
169万円超〜207万円以下 配偶者特別控除(年収に応じて段階的に減少)
207万円超 控除なし

136万円を超えても、169万円までは配偶者の控除額は変わりません。その先も少しずつ減っていく仕組みなので、税金の面では「超えたとたんに世帯の手取りが大きく減る」という壁にはなりにくいといえます。

親に扶養されている子ども:136万円・197万円

アルバイトをしている子どもの給与収入が136万円以下なら、親は扶養控除を受けられます。

  • 19歳以上23歳未満の子どもは、136万円を超えても、新しく設けられた「特定親族特別控除」により、159万円以下なら63万円(扶養控除と同じ額)の控除が受けられます。その後は段階的に減り、197万円を超えるとなくなります。
  • 16〜18歳や23歳以上の子どもは、136万円を超えると扶養控除(38万円)がそのまま受けられなくなります。

くわしくは「税制改正でどう変わる?『基礎控除・扶養控除』のポイント整理」で解説しています。

令和10年分以後は少し下がります

令和8年分・令和9年分の金額は、特例による上乗せを含んだものです。令和10年分以後は、基礎控除が99万円(合計所得金額132万円以下の場合)、給与所得控除の最低額が69万円となり、本人に所得税がかからない給与収入は168万円になります。また、令和10年分以後は、物価の動きに合わせて2年ごとに見直すことが基本とされています。


社会保険の壁(こちらの影響が大きい)

手取りに大きく響くのは、税金よりも社会保険の壁です。社会保険に加入すると、健康保険料や厚生年金保険料が給与から差し引かれます。

106万円の壁:賃金の要件は2026年10月に撤廃

2026年9月までは、厚生年金保険の被保険者が51人以上の会社で、次のすべてに当てはまるパート・アルバイトの方が、会社の健康保険・厚生年金保険に加入します。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上(年収換算で約106万円)
  • 学生ではない

(2か月以内の期間を定めて雇われる方などは、もともと加入の対象外です。)

このうち「月額8.8万円以上」という賃金の要件は、2026年10月に撤廃されることが決まっています。2026年10月以後は、51人以上の会社で週20時間以上働く方(学生を除く)は、収入にかかわらず加入の対象になります。「106万円の壁」は、年収ではなく「週20時間」という働く時間の壁に変わると考えるとわかりやすいでしょう。

さらに、会社の規模の要件も段階的に縮小されます。人数は、パートを含まない厚生年金保険の被保険者数(正社員など)で数えます。

時期 対象となる会社の規模(厚生年金保険の被保険者数)
2027年9月まで 51人以上
2027年10月 36人以上
2029年10月 21人以上
2032年10月 11人以上
2035年10月 規模の要件なし

岡山県内の中小企業でも、今後数年のうちに順番に対象となっていきます。社会保険料は会社と従業員で折半するため、パートを雇っている事業者の方は、人件費への影響も早めに見積もっておくと安心です。制度の詳細は「社会保険の改正で"年収の壁"はどう変わる?」もご覧ください。

130万円の壁:扶養から外れるライン

会社の社会保険に加入しない働き方でも、年収の見込みが130万円以上になると、配偶者や親の健康保険の扶養(被扶養者)から外れます。配偶者の扶養に入っている方は、国民年金の第3号被保険者からも外れます。

その場合、国民年金保険料(令和8年度は月額17,920円)と国民健康保険料を自分で納めることになり、手取りへの影響が大きくなります。

この130万円の判定には、最近次のような見直しがありました。

  • 19歳以上23歳未満の方(配偶者を除く)は、2025年10月1日から、基準が150万円未満に引き上げられました。
  • 2026年4月1日から、労働条件通知書など労働契約で定められた賃金から見込まれる年収が130万円未満であれば、原則として扶養に入れる取扱いが始まりました。
  • 人手不足による残業などで一時的に130万円以上になった場合は、事業主の証明を添付することで、原則として連続2回まで扶養にとどまれる取扱いがあります。

なお、60歳以上の方や一定の障害がある方の基準は180万円未満です。実際の認定は加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)が行うため、細かな取扱いは保険者に確認が必要です。


壁を意識するときのポイント

  • 所得税の壁は大きく上がりました。本人は178万円まで所得税がかからず、配偶者の控除も169万円までは変わりません(令和8年分)。
  • 住民税は別の基準で、所得税より低い年収からかかります。
  • 社会保険は「週20時間」が分かれ目になっていきます。加入すると保険料の負担は生じますが、将来の厚生年金が増える、病気やけがで休んだときに傷病手当金が受けられる、といったメリットもあります。
  • 130万円の壁は残ります。19歳以上23歳未満は150万円未満、判定は労働契約の内容で行う取扱いがあります。

まとめ

「年収の壁」はいくつもありますが、税金の壁は令和7年度・令和8年度の改正で大きく上がり、段階的に控除が減る仕組みのため、手取りが急に減る場面は限られています。手取りへの影響がより大きいのは社会保険で、2026年10月の賃金要件の撤廃と、2027年10月以降の会社規模の要件の縮小により、「年収いくらまで」ではなく「週何時間働くか」が大切な基準になっていきます。

働く方にとっても、パートを雇う事業者にとっても、税金と社会保険の両方を合わせて考えることが大切です。税理士法人アストラストでは、岡山県内の中小企業・個人事業主の方からの、パート従業員の年末調整や扶養の判定、社会保険加入による人件費の見込みなどのご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。なお、社会保険の加入手続きや扶養認定の細かな取扱いは、年金事務所や加入している健康保険、社会保険労務士にもあわせてご確認ください。

※本記事は令和8年9月19日現在の法令・国税庁公表資料等に基づく一般的な説明です。実際の取扱いは、個別の事実関係によって異なります。

参考資料

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